2012年3月29日木曜日

20120329 JBJS(Br) The early management of Pts. w/ multiple injyries その4

骨盤骨折と尿道カテーテル留置

尿量の測定は腎機能の測定や、どの程度蘇生に反応しているかということを知る重要な情報源の一つである。尿道損傷は女性ではほとんど見られない。なので女性の骨盤骨折の患者では尿道カテーテル留置をおこなってもまず差し支えない。男性の骨盤骨折には尿道損傷を合併することがしばしば見られ、特に前後圧迫タイプの骨折によって引き起こされることが多い。
骨盤骨折があるときに、尿道カテーテル留置を行うかどうかというのは非常に議論のあるところである。尿道カテーテル留置によって尿道の部分損傷であったのを完全損傷にしてしまう恐れもある。経験上骨折の血腫内にカテーテルが挿入されることがある。この場合血腫と共に外に漏れ出した尿が排出されることがある。そして尿が排泄されるので術者が膀胱内に尿道カテーテルを留置できたと勘違いすることがある。このような勘違いはしばしば致命的な判断ミスを引き起こしたり、また血腫内への感染のリスクを伴う。
尿道損傷を診断するための身体所見はない。筆者の考えとして、一度は愛護的に尿道カテーテルの挿入を行ったほうが良い。この場合には慣れた術者が慎重に行うことが必要である。カテーテルから血尿が認められた場合には逆行性の尿道造影を行う必要がある。もし、尿道カテーテル挿入前から尿道損傷が疑われるような場合であれば最初から逆行性の尿道造影を試みたほうがよい。
逆行性の尿道造影が陽性。または尿道カテーテルの挿入が不可能だった場合には経験のある泌尿器科医をコールする。このあとどうするかという判断は非常に難しい。セルジンガー法を用いて恥骨上から尿道カテーテルを留置したり、場合によっては恥骨上から膀胱切開術を検討する必要がある。膀胱切開術を行う際には、骨盤骨折の最終内固定をいかに行うかという判断ができる整形外科医が泌尿器科医と相談をして皮切の位置を決める必要がある。

骨盤骨折と低血圧
重症骨盤骨折と低血圧を許容することはともに難しい問題である。整形外科の上級医と外科医との間で詳細な検討が行われなければならない。これらの患者ではたいてい凝固異常を灯っなっている。また大量輸血プロトコールが実施されている。このような場合の最大の問題は骨盤からの出血か、または腹腔内出血かを判断することである。
このような重症骨盤骨折の場合には通常行われるような腹部の診察は役をなさない。たとえ腹部所見が陰性であっても腹腔内大量出血の可能性は全く否定出来ない。
FAST(focused abdominal sonography for trauma)は偽陰性になりやすいので注意が必要である。すなわち、FASTが陽性であれば出血があるといえるが、FASTが陰性であっても出血がないとは全く言えない。
腹部CTは大量の情報が得られる検査方法である。ただし低血圧が続いてしまっているような患者でCTに行くことは困難である。どのタイミングでCTに行くかは経験のあるリーダーの判断による。CTがどれくらい初療室から離れているかということが判断をまた難しくする。
血圧が70以下であれば蘇生を優先する。
骨盤ベルトが大転子の位置に正しく装着されていればそのままの状態で開腹術を行う。骨盤骨折からの出血を先に止めるべきか、腹腔内出血を先に止めるべきかというのは一般外科医と協力のもと診療方針を決定しなければならない。骨盤骨折による出血は腹腔内からコントロールすることは難しく、腹腔外からのアプローチ、血管造影や塞栓術が考慮される。これは実際に診療にあたっているスタッフの判断による。もし、骨盤からの出血が続いており、血圧がそれなりに保たれているのであれば血管造影のうえ塞栓術を行うか、手術室へ行くかはその時その時の判断である。麻酔科医、放射線科医、整形外科医の間で相談してどうするかを決定する。血管造影室はたいてい手術室から離れた場所に設置されていることが多いので、患者をそこへ運ぶ、と決めた場合にはバイタルの変化に注意を払わなければならない。

2012年3月27日火曜日

20120325 JBJS(Br) The early management of pts w/ multiple injuries その3

AO Trauma Pediatric Fracture Course, Riyadh, 2010 重症骨盤骨折

重症骨盤骨折は生命を脅かすような出血をきたす。この時重い腹腔内損傷を合併している場合がある。病院前もしくは院内での死亡の原因は、30%が出血によるもので、15%が出血と頭部外傷の合併であった。出血源としては23%が大動脈、23%が胸部、23%が骨盤骨折、10%が腹腔内出血、7%が四肢からの出血であった。外傷にかかわる整形外科医はとくに骨盤骨折からの出血をいかに減らすか、その出血による死亡をいかに減らすかが重要となる。 初期治療はバンドの装着である。骨盤バンドの目的は骨折部の安定とタンポナーデ効果による止血効果である。凝血塊を壊さずにおくようにしておくと疼痛の軽減にもつながる。単純レントゲン写真は真っ先にとる必要があり、これによって骨盤骨折と腹腔内出血,内臓の損傷との鑑別を付けることができる。

骨盤バンド(pelvic binderpevvic binderとは
骨盤バンドは骨性の骨盤輪をサポートする目的で用いられる。装着は非常に容易でイギリスでは病院外で装着したうえで搬送されてくる。このバンドを巻く位置は腸骨翼ではなく、大腿骨大転子部にまくことが肝であることを知っておく。こうすることでopen book型の骨折に対しても有効であるし、腹部への外科的アプローチも可能である。骨盤バンドにはいろいろなタイプのものがあるが、その効果はいずれも同じである。整形外科医であればどのタイプの骨盤バンドでも扱えるようにしておきたいものである。骨盤バンドが手元になければシーツラッピング、もしくは普通のベルトを用いる。しかしシーツラッピングは時間経過とともにその圧迫力が低下し、また普通のベルトは皮膚トラブルを起こすので両方とも注意が必要である。 病院への搬送前であっても、受傷機転から骨盤外傷が疑われ、ショック状態にあるような患者であれば骨盤バンドを装着することは合理的である。側方圧迫型の骨盤骨折では骨盤バンドの装着によって骨折部の転位が進行することは自明であるが、臨床的にこれによって有害事象が増えたとする報告はない。(そもそもバンドを付ける程度の侵襲よりも受傷そのものの侵襲のほうが大きいから

骨盤バンドの装着についての前向きの無作為割り付け試験は不可能である。しかしながら最近の観察研究によれば、骨盤バンドの装着によって有意に治療中の血圧が上がったとする報告がある。また骨盤の不安定性を60%減少させたとする報告もあり、その有効性はある程度認められる。

正面からの骨盤単純レントゲン写真は有用である。多発外傷の場合には胸部レントゲン写真と同時に撮像する必要がある。骨盤動揺性を調べる試験は無駄で、むしろ有害であるので行わない。それならば骨盤周辺に何かしらの傷がないかということを注意深く視診でおこなったほうがよい。

バインダーを付けた状態で撮像した場合には少し落ち着いてからバインダーを外して撮影を行う。

いわゆる”ログロール”はレントゲン写真が出来てくるまでは行わない。二次性の出血を助長する場合があり、この二次性の出血はコントロールすることが困難である。一般の鈍的外傷では緊急に処置を要するような骨盤後面のけがには乏しい。逆にテロで爆発に巻き込まれた場合には骨盤の後ろに大きなダメージを負っているのでチェックが必要である。ここは外科医としての常識を働かせて、必要であると考えたときにのみ緊急で廃部の確認を行う。

骨盤バンドの使用によって緊急に行う骨盤の創外固定の必要性は減少した。骨盤バンドが有効でないような病態では創外固定も有効でないことが多く、この場合には手術治療を含めて検討する。骨盤バンドの装着は最長24時間までとしておく。皮膚トラブルには注意が必要である。バンドの位置が常に正しいかは経時的にチェックを行う。脊髄損傷で麻痺を伴う場合には皮膚トラブルの発見が遅れることがあるので余計に注意が必要である。

2012年3月25日日曜日

20120325 JBJS(Br) The early management of pts w/ multiple injuries その2

Permissive hypotension

救命の際に、わざと低血圧にして救命しようという方法がある。これは、脳、心臓、腎臓への灌流を保つということ、晶質液による血液の過剰な希釈を避けるということ、最初にできた止血塊を二次出血によって壊さないようにすること、という意味がある。この方法は体幹への穿通創には有用であるとされていた。最近では鈍的外傷、特に重症骨盤骨折においても有効ではないかということが言われている。この手法のキモはまず外科的に早期に出血のコントロールがなされることである。今まではここから普通の血圧まで戻していたが、最近では生食250mlまでとしている。晶質液は病院に来るまでの投与として、2リットル以上は投与しないようにしている。もしそれ以上の投与が必要となった場合には輸血を考慮し、外科的に止血する方法を探る。目標とする血圧は撓骨動脈が触れる程度。収縮期血圧を70−80mmHgにて保つ。もし、頭部外傷が疑われるような場合であれば脳への血液の灌流を保つために90mmHgまで上げるようにする。投与液は血液、もしくは血液製剤が好ましい。外科的手術が最も重要である。外傷チームのリーダーと一般外科医によって手術法を決定する。搬送されてから20分以内には手術室へ搬入できるような体制にしておきたい。

大量輸血のプロトコール
中東での戦争の経験から、輸血に関してのいくつかの新しい知見が得られている。早期からのFFPと血小板の投与が大量輸血をするような患者では生存率を改善し、また必要とする総輸血量をへらすということがわかった。特に大きな違いが出たのは搬入後6時間以内の死亡率であった。早期のFFP投与が重要であることが示唆されている。この大量輸血プロトコールの重要な点は血液の希釈、低体温、凝固異常を避けるために”全血”を投与することを目的としていることである。この大量輸血プロトコールは輸血を管理する技師に連絡をとるだけで開始することが可能となっている。このシステムによって輸血までの時間が大幅に短縮された。
イギリスではさまざまな輸血のプロトコールが用いられている。最も適した輸血の割合について検討が重ねられている。現在筆者の施設では赤血球、FFP、血小板を2:1:1の割合で投与している。これらの管理も技師によって行われている。大量輸血が行われた患者では低カルシウム血症となっていることがあるので適宜測定が必要である。
多発骨折、重症骨盤骨折を受傷している患者においてもこのプロトコールが適切か検討されなければならない。なぜならばこれらの患者ではひどいショックとなっていなくても凝固異常のリスクが高いからである。小児についてはまた別のプロトコールが検討されなければならない。
recombinant factorⅦaが大量出血の際に使われるようになってきている。公式に認められた方法ではないが医師がその個人の責任で使用しているのが現状である。現在の研究では出血による死亡率の減少を認めていが、時折大きな血栓症のリスクをきたすことがあると言われている。まだルーチンで使用することについての同意が得られている状況ではない。
輸血は迅速に加温されなければならない。FFP、血小板は可能な限り早く投与されなければならない。凝固の結果を待つ必要はない。なぜならば大量出血直後ではAPTT,INRとも凝固異常が始まっていても正常値を示すことがわかっているからだ。しかしながら、凝固の血液検査が無駄という訳ではなく、血液が投与されるたびに測定しておいたほうが良い。
トロンボエラストグラフィが最近良く使われるようになってきている。すぐ測定できて、早期での凝固異常の発見に有用であると言われている。

トラネキサム酸(トランサミン)
トランサミンは抗線溶剤として古くから心臓外科の世界で使われてきた。また脊椎外科、関節外科の世界でも術中の出血を減らすということで投与されている。20211例を対象とした外傷性ショックの患者にトランサミンを無作為に投与したCRASH-2という研究がある。1gずつ10分後、8時間後に投与。受傷後1時間以内の早期での死亡率はプラセボ群で7.7%、トランサミン投与群で5.3%であった。相対危険率は0.68.
受傷後1-3時間での出血による死亡率もプラセボ群で6.1%、トランサミン投与群で4.8%と有意に減少させた。この結果は鈍的外傷よりも穿通創でより大きく効果があり、また受傷後3時間以内で投与された方がより有効であるということが言われている。また重大な合併症もなく経過した。以上からトランサミンの投与は重症外傷の患者が来た時には真っ先に考えてもよいオプションであると言える。

<論評>
トランサミン無敵ですね!笑
こんな古い薬なのに、それなりの効果があると言うところでびっくりです。

2012年3月24日土曜日

20120324 JBJS(Br) The early management of Pts w/ multiple injuries

記念すべき200post目です。
なんだかんだ言っても外傷が好きな自分がおりますので、外傷に関連した最新のJBJS(br)を斜め読みしてみます。

抄録
この10年間で重症外傷に対する救命、早期の治療については大きな進歩があった。ドイツ、オーストラリア、アメリカのような国では重症外傷を受け入れるための救急サービスの再編成が行われ、救命センターでは日々集中した治療と研究が行われている。
紛争が続く中東では重症外傷に対する専門的な知見が大量に積み重ねられている。先の戦争では生命の危機にあったような兵士が今では生きていられるようになっている。そしてこの戦場での経験が一般市民に対しての治療にも反映されるようになってきている。
本研究の目的は重症多発外傷に対してのevidenceに基づいたガイドラインを一般整形外科医に向けて提供することである。ただし、このエビデンスはある医療圏の中で十分に経験を積んでおり、また人的資源が十分な所でのエビデンスであり、自分に与えられている医療資源を十分に勘案してエビデンスは用いてほしい。

・外傷チーム
多発外傷を受け入れる病院はいくつかの多発外傷チームを持っておく必要がある。このチームの人員は救命、外傷の評価を速やかに行う能力をもっている必要がある。このような外傷チームを作っておくと生命に危機が及んでいるような患者に対して速やかに治療を開始し、その救命率を上げることができることが知られている。
チームの中でよいリーダーシップを取ることも必要である。そしてそのリーダーはいくつかのサブスペシャリティを持っている必要がある。もし適切に訓練されているのであれば、アメリカやドイツでは一般外科医として訓練された外傷外科医がその役割を担う。イギリスやオーストラリアでは麻酔科医、一般外科医、整形外科医を含んだチームによって方針を決定する。またこの中には放射線医、脳神経外科医をも含む場合がある。経験のあるナース、麻酔補助士もまた重要な役割を担う。このようなメンバーによって多様な受傷をしている患者に対して適切に専門医にコンサルとして協力して治療に当たる。
外傷チームは患者の到着前には受け入れ態勢を整えておく必要がある。この受け入れ態勢の整え方はセンターによって違いはあるが、受傷起点、身体所見、解剖学的要素からどのようなチームを編成するかを決める。いくつかのセンターでは二段階に準備するシステムとなっており、”外傷チーム配置につけ”と”外傷チーム準備を開始せよ”と段階に分けていることもある。すべてのメンバーが自分の役割を前もって決定しておくべきである。整形外科医は重症骨盤外傷、セカンダリーサーベイにおいて重要な役割を担う。四肢外傷、脊椎外傷についても担当となる。整形外科医といえども、気道確保、胸腔ドレーンの挿入くらいはやれるようにしておくべきであろう。

Primary Survey
戦場以外の場所で吹き出すような大出血をみることは稀ではあるが、ないわけではない。戦場では気道確保と同様の重要度で止血が行われる。四肢においては直接圧迫法をまず試みる。もしあればターニケットを装着する。ターニケットは装着した時間を記録する。油性マジックで患肢に記載しておく。できるだけ早く手術室で止血を行わなければならない。手術室に待機しているチームは患者が運ばれてきたらすぐ手術できるように準備して置かなければならない。
気道確保、呼吸についてはAdvaned trauma life supportを参照すること。日本ならJATEC。頚部、脊椎、骨盤は移動の際には愛護的に行う。ケイツは硬性カラー、砂袋、、テープで固定。脊椎骨折の除外診断は安易に行わず、British orthopaedic association(BOA)のガイドラインかEASTのガイドラインにそって固定は外すようにする。

Circulation
外表性の出血はすぐ止血する。あまりにも大量の出血があるような場合には気道確保に優先する場合があってもよい。鼠径、腋窩、頚部などターニケットが使えないような場所では直接圧迫法にて止血する。市中で見られるような鈍的外傷ではほとんど見られないが、銃創ではよく見られるので覚えておいてもよい。この数年凝固因子を誘導するような外用止血剤が開発されている。これらの止血剤は3種類あり、凝固因子を集めるタイプのもの、癒着を促進するもの、凝固因子の前駆物質を供給するものである。これらの使用によって出血が早期に止めることが出来ればよいが、実際の使用についての臨床上の情報は殆ど無い。

その2へ続く

2012年3月19日月曜日

20120319 JBJS(Am) Mortality and Morbidity in dialysis-dependent Pt undergoing spinal surgery:analysis of National Administrative database in Japan

このブログも199回目の投稿になりました。なんとか200回までは頑張りたいものですね。笑
引越、転勤でバタバタしておりますが今後も続けて参りますのでよろしくおねがいします。

普段外来やっていて困ることといえば、その患者さんの状態を評価しようと思っても手元にJOAスコアなどの表がないとなかなか調べきれないことです。
膝とか股関節は暗記しているのですけど、それ以外はぱっと出てこないです。
そのうちこのサイトのどこかにスマートフォン対応でチェックを入れるだけでその罹患部位特異性の高いスコアを表示して計算できるようなものも作りたいですね。

さて、表題のとおりです。
dialysis
抄録
透析中の患者における脊椎手術への影響は十分に知られているわけではない。本研究の目的は透析をしていると術中の危険性がどの程度かということを決定することと、破壊性脊椎関節症が存在するとより危険が増すか、という点について調査を行った。
方法
日本全国からのDPCデータの解析を行った。2007年から2008年までの間のデータを使用し、椎弓切除術、椎弓形成術、椎間板切除術、脊椎固定術を受けた患者について調査した。そしてサブグループ解析として破壊性脊椎関節症の有無についても調査した。
結果
51,648例についての調査を行った。うち869例が透析患者であった。この内の95名が破壊性脊椎関節症であった。
病院内死亡率は0.41%。透析群は非透析群よりも有意に死亡率が高かった。調整後で評価すると院内死亡率は非透析群の10倍となった。透析群は術後の合併症もまた有意に多かった。破壊性脊椎症がある患者では合併症発生率がない群に比べ65%高かったが、有意ではなかった。
結論
透析患者で脊椎手術を必要とする患者の術後院内死亡率は透析をしていない患者の10倍であった。また心血管イベント、敗血症、呼吸不全などの重大な合併症を多く起こす傾向にあった。また破壊性脊椎症の患者ではより高い確率で合併症が起こりうる。

考察
DPCデータを用いて、透析患者の脊椎手術についての調査を行った。以下の3点がわかったことである。
・透析患者は非透析患者に比べて術後院内死亡する確率が10倍である。
・透析患者は重大な術後合併症をおこす確率が高い。
・破壊性脊椎症がそんざいすると合併症を起こす確率が高くなる。
この研究の強みは、そのn数である。このような国レベルでの入院患者データベースは最近良く使われるようになってきている。
50000人規模での調査は透析患者に於ける研究の中で最大のものである。実際にどの程度合併症が起こっているかを調べるためにこの研究は行われた。
この研究で脊椎手術での院内死亡率は0.41%であった。これは頚椎術後の死亡率が0.57%、側弯症術後が0.3%、椎弓切除術後が0.17%である。
この研究ではまた破壊性脊椎症が存在する場合についても述べている。破壊性脊椎症の患者は全体の10.9%であった。破壊性脊椎症は長期間の透析の結果として生じる脊椎、椎間板、靭帯の脆弱化によって起こる。破壊性脊椎関節症がある患者ではその手術が大掛かりなものとなることが多い。Abumiらの報告でも固定術が必要がなることが多いと言われており、今回の研究も80%以上で固定術を必要とした。また、破壊性脊椎関節症の患者では手術時間の延長と麻酔時間の延長が認められた。神経学的予後にかんしては良好であるとAbumiらは述べているが、うち2例がフォロー中に死亡している。(16症例中)。破壊性脊椎関節症の患者では術後早期の死亡はそれほど珍しいことではない。この研究でもサブグループ解析をしたら術後合併症、死亡率は有意な差はなかったが高かった。
この研究はDPCデータによる研究なので、透析期間がどうなのか、神経学的にはどうだったのかということを評価することもできない。また入力ミスの可能性もありえる。入院期間が長いけれども、保険制度の違いだと思う。


【論評】
DPCデータを用いた大規模な検証結果です。なんとなく実感と一致するところがあります。
東大での研究ですけれども、田舎にいてDPCデータを持ってきて何かの研究がデキないかなんて考えてみました。厚労省のページを探してみたのですけど、欲しいデータがどこに有るかわかりません。。。。
そもそも僕のもってるPCでこんな大規模解析はムリでしょうけど。笑

あと同様の研究でやるとすれば透析患者の股関節、膝関節での同じような研究ですかね。

2012年3月2日金曜日

20120302 JBJS(Am) Starting rehabilitation within 24 hrs after TKA was better than delaying to within 48 to 72 hrs

TKAの患者でいつからリハビリを始めたほうが良いかということは未だに議論となっている。2,3日待ってからのリハビリの方よりも24時間以内にリハビリを始めたほうがよいのかどうかを調べるためにこの研究は行われた。

研究デザイン:RCT.評価者はブラインドされている。

セッティング:スペインの大学病院

患者:306人の患者。55歳から75歳のTKAを受けた患者。心臓、腎臓、肝臓などの内科疾患がある患者は除外した。またRAの患者、腫瘍用人工関節を使用した患者も除外している。最終的に273人の患者の評価を行った

介入方法:無作為割付。24時間以内にリハビリテーションをはじめる群と、48時間以内にリハビリテーションをはじめる群とに分けた。リハビリテーションは退院までの毎日行われ、同一のPTによって施行された。45分間のセッションで、0度から40度までのROM訓練、等尺性四頭筋、二頭筋訓練。足関節の可動域訓練。有酸素運動、姿勢指導、日常生活動作指導、歩行訓練、移乗訓練を行った。術後4日目までに全てのメニューをこなせるようにプログラムは組まれている。

結果の評価:関節可動域、筋力、疼痛を主たるアウトカムと設定した。セカンダリーアウトカムとしてBarthelインデックス、歩行バランス評価を用いた。

結果:24時間以内からリハビリテーションを始めた群の方が48時間以内にリハビリを始めた群よりも入院期間が短かった。また筋力、膝関節可動域、疼痛においても24時間以内にリハビリテーションを始めた群の方が優れていた。早期リハビリを開始した群の方が普通の歩行バランスを多く獲得していた。自律性の回復は両軍で差はなかった。

結論:早期リハビリテーションの開始によって入院期間の短縮がはかれ、また筋力、関節可動域、歩行能力においてもよりよい改善が得られた。


【論評】
リハビリをいつはじめるか、と言うのはなかなか悩ましいところです。
患者さんが術後いたがっているところをみると、まあ、少し落ち着いてからなんていうことも少なからずありますし。
ただ、術後の入院期間、リハビリテーションの考え方は日本とは少し違うのかなというのもうっすらと感じました。日本でTKA術後5日で帰る医療機関はまだごくごく少数派であると思います。この論文だと長い人で8日間の入院ですし。
全体には早期リハビリテーションの有用性が明らかになってきているのだと思います。